イギリス総選挙、結局どういうこと? 「ザックリ」解説

イギリスで8日に行われた今回の総選挙。圧勝すると踏んで前倒し解散総選挙に打って出た与党・保守党のメイ首相でしたが、第1党にとどまるものの過半数を維持できず、議席数を減らす大敗北を喫しました。

一方で最大野党・労働党は議席を大幅に増やし、イギリス議会の勢力図は大きく塗り替わりました。結局、どの政党も過半数を握れない「ハングパーラメント(宙吊り議会)」という結果に。ただ政局を混乱に導いただけという、歴史的に見ても稀な「無意味な選挙」となってしまいました。

自分から仕掛けた「ギャンブル」に大負けしてしまった保守党とメイ首相。これから「EU離脱」という大変な宿題を抱えるイギリスで、どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。総選挙の結果とともに、イギリスの迷走の過程を見ていきましょう。

 

総選挙の結果とEU離脱交渉への影響

今回の結果は以下の通りです。

過半数の326議席を割ってしまった保守党のメイ首相は、10議席を獲得した北アイルランドの地域政党である民主独立党(DUP)の協力を得て議会で過半数を確保する予定です。

しかしEU離脱方針で保守党と意見が違うDUPはあくまで「閣外協力」という形にこだわる姿勢で、保守党はこれから重要法案ごとにDUPの合意を取り付ける必要があります。それでも保守党政権が確保できる議席数は過半数を2議席上回るのみ。残念ながら、わずかな造反者ですぐに瓦解してしまう不安定さを残しています。

より多くの議席数を確保してEU離脱交渉を自国に有利に進めるためにわざわざ前倒しで行った総選挙で、逆に「過半数」という武器を失ってしまったメイ首相。世論だけでなく与党内部からも批判の声は絶えず、求心力の低下は避けられません。メイ首相が今後、国内をまとめていけるのかどうかは不透明で、イギリスの不安定な状況に世界中で懸念が広がっています。

また、今回の結果で、EU離脱交渉が難航することは必至です。EUとイギリスは今月19日から本格協議を開始する予定でしたが、政局が混乱している現状を見ると協議は先送りになる見通し。2019年3月までもう2年を切っている中でのこの迷走っぷりに、期限内での合意を絶望視する声も少なくありません。

 

どうして「波乱」が起きてしまったの?

なぜこのような事態となってしまったのでしょうか。その原因として、労働党のジェレミー・コービン党首個人の躍進や、二大政党どちらもEU離脱を支持したため明確な争点差別化の失敗、期間中に起きたイスラム過激派による2度のテロ事件の影響、など多くの要因が指摘されています。

しかし、その中でも大きい原因はメイ首相個人の失点でしょう。

メイ首相は、「EUとの離脱交渉をイギリスに有利に進めるためには、強く安定したリーダーシップが必要だ」と訴え、高い保守党への支持率を背景に解散総選挙に臨みました。この「強く安定したリーダーシップ」という言葉を何度も口にしていたメイ首相は、イギリス政治を語る上で欠かせない、とある政治家を念頭に置いていたと思われます。

その人の名は、マーガレット・サッチャー元首相。自由主義路線で1970年代のイギリスを牽引し、瀕死だった国力を蘇らせた「鉄の女」です。サッチャー氏に次ぐ二人目の女性首相で多くの共通点もあったメイ首相は、サッチャーばりのタフさをアピールしようとして毅然とした態度で政権運営に臨んでいました。

しかし高齢者の在宅介護での自己負担増の方針を公約で打ち出した際、有権者から強い反発が出るとたちまち軌道修正してしまいました。その上、正当な理由を明かさずテレビ党首討論会を拒否したことで一気に「鉄の女2世」から「臆病な政治家」へ転落してしまいました。昨年の国民投票ではEU残留派だったのに、離脱派に転向したこともダメだったようです。

挙句の果てに、メイ首相と保守党をひたすらディスるラップ曲「Liar Liar (ウソつき)」がイギリスで大ヒット。イギリスのオフィシャル・シングル・チャート・トップ100で4位に入るなど、「メイ政治を許さない!」旋風が全英で吹き荒れました。

「強いリーダー」に頼っている政党は、そのカリスマに綻びがでると一気に崩れてしまう。カリスマと安定を失った政権はどこへ向かうのか。これからのイギリスの「迷走の先」に注目です。

 

Written by Kensho Kuremoto

 

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